剥がしてみたら。

今週のお題「わたしの部屋」

何年ぶりか。

襖の張替、もしかしたらほぼ20年ぶりかしら。よく見ると結構黄ばんでいる。下地まで思いきってべりべり剥がすと、チョークで書かれた部屋番号、部屋の向きと方角が出てきた。
ああ、職人さんが一枚一枚手で張ってくれたんだなあ。そっとチョークの文字を撫でてみる。
今の会社で最初に働いたのはちょうど10年前。それからあちこちで働いた。確かに今の会社はさっぱりしていて畦道は好き。職場もゆったりしているし、静かで環境もいい。
けどね、あんまり、愛はないね。
この会社で働いている自分のことを愛しています、っていう感じの人は多いけど。まあ、そういう人すらもいない、いやーな会社もありますよ。お金がもらえるんだったら一日座っていられるのがいい、っていう人ばっかり、人の悪口ばっかりの会社もあるからね。
でもね。あんまり、愛は感じない。

ひさしぶりに。

いろいろ古い部屋なので、洗面台を新調することに。神戸は家具の街なので、ビル丸ごとインテリアの展示場なんていうところがあります。駅から近くて便利です。いろんなメーカーのキッチンやらトイレやらお風呂やらが揃っています。もちろん洗面台も。
そこで、洗面台のメーカーとしてはそんなに知られていないけど、畦道が一発で気に入ってしまった洗面台がありまして。
そこの担当の人から、愛を感じてしまいました。
今の会社以外にも、会社内で愛を感じることはありました。チョコレートの会社とかパンの会社とかね。それは自分の手で作っているからで、自分の心がそのままこもっているからで。
でも、その洗面台の担当さんは、本当に仕事が好きそうだった。てきぱき説明してくれました。
他のメーカーのショールームでピンとこなかったのは、その「愛」が伝わってこなかったからかもね。

ずっと感じていたいわけではないけれど。

愛のある会社で働きたいわけじゃない。どんよりしたうっとうしいのは困るけど、人間関係は薄い方がいい。さっぱりした雰囲気の会社が好き。極端な話、顔と名前が一致しなくてもいいです。仕事さえさせてくれたら。
でもね、会社を、その会社が作る製品を愛せる人は、幸せだね。
その会社も幸せ。うちの製品はこんなに素晴らしいです、って、本気で言えるのって、素敵なことだね。

愛せるか。

浮き草のハケンに、その会社の製品を愛せるか。それは無理ね。でも、好きにはなれる。
新製品が出たら使ってみようかな、くらいは思える。よかったら友達に勧めてみようかな、くらいは思える。
たぶん畦道が会社員にならないのは、会社を愛せないからだろうな。
ああ、人のこと言えないわ。畦道だって、会社への愛より自分への愛の方が絶対強いもんなー。