面白かった記事。

わりと面白い。

何だかんだ言っても、男性向けのビジネスサイトの方が面白いよなー、っていうのでもうちょっと読んでみました。
ダイヤモンド社のビジネス情報サイト・ダイヤモンドオンライン
http://diamond.jp/

「スーパー派遣さん」は職場に埋もれていないか?
「人財」損失を防ぐ脳内シミュレーションのススメ
渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第22回】 2013年5月22日
退社時の引き継ぎ作業を見て上司も仰天
派遣さん」の仕事の質量は正社員3人分?
ある「派遣さん」の話だ。
彼女は、中堅企業の専門プロジェクトの総務兼経理として、4年前に雇われていた。その前には同じ会社の別部門で働いていたため、すぐに仕事も覚え、気がつくとそのプロジェクトの専門家となっていた。
その彼女は家族の都合で、この夏に退社することになった。
基本的に、そのプロジェクトの総務関係および取引先との交渉窓口は、全て彼女が行っていたので、その仕事量はかなりのもので、夏の退社に備えて今から引き継ぎ作業を行う必要があった。
「正社員」である彼女の直属の上司は、その引き継ぎ作業を始めて、度胆を抜かれたという。
彼女の行ってきた仕事量とその質の高さは、平凡な正社員の比ではなかった。
また、引き継ぎに備え、誰にでもわかるように、ファイル、フォルダ類を全て簡潔に整理し、自分の退社以降想定される仕事の書類のひな型もすべて揃えてあった。提出時にアップデートされているであろうデータをはめ込むだけで、提出可能な状態にまで準備されていたのだ。
また、自分の退社以降に不明な点が生じた場合、どの資料を参照すべきか、取引先や他部署の誰に問い合わせるべきかの情報も、全てファイルに埋め込まれていた。

畦道も、度胆を抜かれるまではいかないけど驚いちゃった。ファイルやフォルダを整理して、誰にでも分かるようにするのなんて、普通のことだから。普通の会社だったら、書類の雛形はあるから。どの資料を参考にするとか、誰に問い合わせるべきとか、分かってないと仕事にならないから。

その上司は、小さな子どもが2人いて、同じく仕事をしている奥さんとともに、仕事と子育てを両立している「イクメン」だ。したがって、子育てしながらの業務の大変さはよくわかっていた。
その「派遣さん」も、同じく小さな子どもが2人いて、定時より1時間早く退社する契約となっていた。つまり残業、土日の就労は一切なしで働いていたのだ。
もちろん、子どもが病気になったときなどには、彼女も突発的に仕事を休まざるを得ない。正社員よりも就労時間は圧倒的に少ない。
にもかかわらず、上記のような仕事をこなすばかりか、取引先や他部署でも、「彼女がいないと話が進まない」という声をよく聞き、クレーマーで有名な他部署のお偉いさんからの電話も、彼女が対応すると丸く収まるのは、有名であった。

この「派遣さん」は、就労時間が長かろうが短かろうが仕事はできるのよ。能率がいいからね。頭いいからね。子供がいて働いてる女の人が頭いいのなんて決まってるじゃん。
彼女が「他部署のお偉いさん」に評判がいいのは、胡麻をすらないから。おべっかつかわないから。煙たがらないから。「お偉いさん」扱いしないから。ちゃんと相手の話を聞いて、理解して、謝るべきところがあったら謝って、でもその「お偉いさん」が間違ってたらきちんと論理的に説明して、納得してもらうまでちゃんと話すから。何かあったらまた御指導お願いします、って、心から言ってるから。
でもね、この上司を含むほとんどの男性は、女の方が仕事できるって認めたくないの。

その上司は、これまで彼女を派遣のままでいさせたことを後悔しているという。彼女のこなしていた業務は、専門知識と経験のある正社員3人分の質量があった。それを時給で雇う「派遣」としていたのでは、彼女だって長く勤務するインセンティブはなくなってしまうだろう。

畦道はここまで読んでから、ああこの「派遣さん」は、この会社の社員にはなりたくないんだろうなあ、って思った。この会社のことは嫌いじゃないし、仕事のやりがいもあるけど、この会社に所属したくはないんだろうなあ、って思った。

真の「人財」を見極められないと重大な人的資本の喪失につながる
これに似たような話は、たくさんある。事実、私も何度も聞いてきた。組織論の観点から言えば、これは重大な人的資本の喪失であり、人事の失敗である。
本当に能力と経験のある者、組織に貢献できている者が、相応の待遇を得られずに辞めていく。そんな状況をつくり出しているのならば、それは組織に人事制度上の欠陥があると考えざるを得ない。
上司が後悔して終わる問題ではないのだ。

確かに上司の後悔なんて関係ないし、人事制度上の問題でもない。ただ正社員の能力が低いだけ。

その「派遣さん」の名誉のために書いておくが、彼女はそれまで待遇について不平を漏らしたことは一度もなかったという。彼女は、仕事の進め方や内容について、時に挑戦的な議論をすることもあったが、自分自身への処遇などについて文句を言うことは一切なかった。

「挑戦的な議論」になったのは、仕事の進め方や内容がどうしようもなかったからだと思う。女の、しかも派遣が意見を言うだけで「挑戦的」と感じるわけね。

逆に言えば、周りの「正社員たち」はそういった彼女の態度に甘え、かつ、彼女の仕事量と質の高さについて査定することを怠ってきたのである。
その結果、いざ彼女が辞めるとなると、あたふたすることになる。
もし、彼女の働きぶりを適正に査定し、早めに正社員のオファーを出していれば、このような「人財」の流出は防げたかもしれない。

これだけ仕事できるんだから、交渉力があるんだから、社員になりたければとっくに言ってるでしょう。たぶん、正社員になったら残業ばっかりさせられて休めなくて、3人目の子供が欲しくても育休も出ないような会社なんでしょうよ。

ならば、正社員である上司がやるべきことは、このようなことが二度と起こらないよう、組織の仕組みを変えるべく働きかけることだ。それができないようでは、管理職失格である。

大丈夫。そんなできのいい人はなかなか来てくれないから。派遣の世界は狭い。その会社は「居心地は悪くないけど正社員になる価値も意味もない会社」として位置付けられてしまったね。

「社会的交換理論」に基づく認知的トレーニングで人財流出を防げ(中略)
この社会的交換理論についての入門的な考え方は、拙著『不機嫌な職場』や『フリーライダー』に詳しいので、そちらを参照いただきたい。(中略)
話が専門的になりすぎるので、これ以上詳しいことは述べない。重要なのは、その考え方だ。
(中略)
まず、自分の組織の人々の仕事上の関係を線で結んでいく。その取引関係が深い、専門性が高く他に代えがきかない、などの場合は、質の高い関係とみなし、太い線で描く。その作業を行うためには、まずそれぞれの同僚や部下の仕事について、注意深く観察しなくてはならない。
そうすれば、冒頭の例のように、本当は重要な人物なのに派遣のままにしているケースなどが、すぐに見つかる。さらに、その人物がいなくなった場合を想定すると、その人物が交換していた資源がなくなることが、組織の情報フローや生産性にどのような影響を与えるかを知ることができる。
これが難しければ、家族でやってみるといい。妻が、夫が、いなくなったとしたら、どんな資源が失われ、家族関係のネットワークがどう変わるか。頭の中でシミュレートしてみるといい。その過程で、家族のメンバーが家族という「組織」にどのような貢献をしているかを知ることもできる。職場の分析はこれの応用編である。

ねえねえ、それで線が一本も繋がってないのが自分だったらどうする? 自分がいなくなっても全く何の影響もない、っていう結論が出たらどうする?

あの人がいなくなったらどうなる?
人財を手離さない「手立て」を講じよ
企業の人事評価について、これまであまり注目されてこなかったのは、その人物の貢献がなかったとしたら、組織はどうなるかという分析だ。仮に非常に能力が高い人がいたとしても、同じ資源を扱える人がもう1人いれば、その人の「その組織」での価値は半減するのだ。逆に唯一無二ならば、その人を手放すことは組織にとって痛手になる。したがって、手放さないための待遇を考える必要が出てくる。
むろん、組織は常に変容している。仕事の質や量も、時間とともに変わるだろう。貢献できる社員や重要な資源の種類なども変わってくる。したがって、このような脳内シミュレーションは定期的に、できれば毎週1度やるべきである。(後略)

自分がいなくなったら。誰も困らない。そんなこと、別に脳内シュミレーションせんでも分かるでしょ。
組織の価値や仕事の質が低いのは組織の制度のせいじゃない。構成している労働者の質が低いから。特に、事務関連の仕事の質が低くて労働時間ばっかり長いのは有名な話。
要するに、人がだぶついているのよ。能力の低い正社員の仕事を派遣がさっさと片付けてしまうから、正社員はいつまでたっても成長しない。
それが分かってるから、派遣を雇いやすくする法律は労組が嫌がるんでしょ。
大丈夫。そんな会社の正社員の椅子なんていらないから。