そのとおーり。

若い人は分かってるんだろうね。

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労働組合は身分差別社会が大好き[橘玲の日々刻々]
安倍政権による労働者派遣法改正案が国会で議論されています。
これを改悪と主張するひとたちは、「正社員が派遣労働者に置き換えられて格差が拡大する」といいます。それに対して政府側は、これまで専門26業種だけに認められていた条件をすべての労働者に開放することで、労働者のニーズにあった多様な働き方が可能になると反論しています。
労働市場改革が揉めるのは、それが日本社会の根幹である「会社=イエ制度」を揺るがすからです。

派遣法改正法案が衆議院を通過しました。
労働市場改革が揉めるのは、「会社=イエ制度」を揺るがすから。
そうね、その通りだわ。「正社員が派遣労働者に置き換えられて格差が拡大する」っていうのは、実は「仕事のできない正社員が有能な派遣労働者に置き換えられる」っていう恐怖でしょ。
でもね大丈夫よ正社員の皆さん。芸能人の情報をうっかり家族に話してツイッターに流されてしまった銀行の派遣は即刻解雇だったでしょ。でも年金情報を125万件とか流出させた職員はどうなったと思う?  みんな名前知ってる?
大丈夫よ正社員の皆さん。いや、男性の正社員の皆さん。何したって大丈夫だから。組合が守ってくれるから。どんなに能力が低くても、どんなに怠け者でも、お仲間が守ってくれるから。
あなたのしている仕事は派遣社員に置き換えられないから。レベルが低過ぎて。

経済学的にいえば、働くというのは自らの人的資本を労働市場に投資し、そこから報酬というリターンを得ることです。人的資本は学歴や資格、専門知識や経験を総合したもので、それを基準に昇進・昇給が決まります。キャリアアップとはたんなる出世ではなく、さまざまな手段で人的資本を増やしていくことなのです。

これね、まさに派遣的人材活用手法の理想。自分を資本として労働市場に売り込むわけ。自分はこのくらいのスキルがあります、このぐらいの仕事ができます、なのでこれだけの報酬をいただきます。っていうのを、派遣会社が代行してアピールしてくれる。ほんでもって給与計算とか社会保障とか面倒なことも代行して、研修とか資格試験取得の後押しとかもしてくれるのが派遣だと、畦道は理解している。
で、派遣のキャリアアップとは、いろんな仕事を経験して自分の人的資本価値を上げていくこと、と畦道は理解してます。

しかし日本では、こうした近代的な職業観はまったく受け入れられませんでした。いまでも学生たちは、どんな仕事をするかもわからないまま会社に入り、その会社で定年まで過ごすことを人生設計の基本に置いています。

そうねえー。怖いわねー、仕事もできないのに定年までいるんだもんねー。
でもね、これは男子学生、さらに言えば大学入るのがやっとだった目端の効かない男子に限られるんじゃないかしら。頭の良い学生は、ちょっと働いて会社作っちゃう。それこそ人材派遣の会社とかね。
大学の数が増えて、大卒の数だけ増えて、有名校のブランド性が余計に高まっちゃって、畦道の頃はそうでもなかった大学までエリート校みたいになっちゃって、そういう大学の卒業生が集まってシステム運営の会社作って、なんも分かってないおっさんにITちらつかせて儲けてる。
怖いわねー。

そのときにもっとも大事なのは、「会社=イエ」の正規メンバー、すなわち正社員になることです。日本の会社は新卒時に正社員を一括採用するため、大学生活の後半が就活に振り回され、それに失敗すると「非正規」という二級市民になってしまうのです。
「正社員」と「非正規」は身分制ですから、近代社会では許されません。そこで差別に反対する理想主義者は、「派遣を禁止して労働者はすべて正社員にすべきだ」と要求します。

「正社員」と「非正規」は身分制。そうなのか。知らんかった。もちろん、非正規の方が正社員より低いんだよね。

企業経営者や自民党はこれを「非現実的なユートピア主義」と批判しますが、働く者の味方であるはずの労働組合も諸手を挙げて賛成しているわけではありません。民主党政権は「製造業への派遣の原則禁止」を含む労働者派遣法改正を目指しましたが、けっきょく腰砕けになってしまいました。経済界の反対よりも、民主党の最大の支持基盤である連合が、正社員の既得権が侵されるのを恐れたからでしょう。

大丈夫って。正社員の既得権は守られる。それしか労組の存在価値なんてないんだもん。

日本的な「会社=イエ制度」では、正社員は選民であるからこそさまざまな特権を享受しています。法によって派遣が禁止され正社員の数が増えれば、その価値が下がることは誰だってわかります。

この場合の「価値が下がる」は、既得権がなくなって、いつ首になるか分からなくなる、ってことなのかな。数が増えちゃって意味がなくなる、ってことなのかな。労働力としての価値なら、とっくの昔に下がってるけど。
橘氏の文脈だと、正社員は選民で非正規は二級市民、で女性は全部奴隷、ってことなんだろうなあ。畦道はね、非正規のうち、どこででもやっていける能力のある人が市民で専業主婦が貴族、正社員が奴隷だと思う。会社から放り出されたら生きていくところがない、奥さんにも捨てられちゃう。子供にも馬鹿にされちゃう。
あ、非正規のうち能力のない人は。えーと。

ILO(国際労働機関)が日本に勧告しているように、「同一労働同一賃金」が世界標準のもっとも公正な働き方です。そこでは「正社員」と「非正規」の身分差別はなく、すべての労働者が仕事の内容と能力によって平等に扱われます。すなわち、「誰もが派遣労働者で、かつ正社員」になるのです。
これは素晴らしいことですが、その理想が実現したときは年功序列・終身雇用という日本的な労働慣行は崩壊し、会社がイエであることもなくなるでしょう。
労働者派遣法改正が右往左往を繰り返すのは、この国の既得権層が理想を拒絶し、居心地のいい身分差別社会を守ろうとあがいているからなのです。
週刊プレイボーイ』2014年3月3日発売号に掲載

会社がイエであることをなくすには、労組を解体せんといかんなあ。