戦いすんで日は暮れたのか。

大阪都だったからか。

これが大阪都じゃなくて、別の名前だったら違ったのかなあ。違わないのかなあ。どんなだったらよかったんだろう。思いつかないけど。
大阪の人は東京が嫌い。東京都が嫌い。京都には頭が上がらないけど、東京のことは馬鹿にしてる。なんじゃいええ格好しやがって。何がみやこじゃ、ほんまの都は京都なんじゃ。東京なんか京都の出先やないかい。
だから、「府」は我慢できても「都」は嫌なのね。東京の真似なんかしたくない。都なんかつけるんやったらいっそのこと西東京都にせんかいや。

33パーセント。

投票率は66パーセントでほぼ半分が賛成だったから、三分の一が賛成だったわけね。
大阪市の北部と南部の差も、思ったほどじゃなかった。賛成の人もそれほど積極的に賛成っていうわけじゃない。今のままではよくないっていうのは分かるけど、大阪都になったからって何がよくなるのか、どこがよくなるのか分かりにくい。
役所の仕組み、組織の仕組みなんて、大きな会社で働いている人、しかも上の方にいる人にしか関係ないもんなあ。説明されたって分からないもんな。
その点、反対はしやすかったね。大阪市がなくなると住民サービスがなくなる。消防車が来なくなる。生活保護が受けられなくなる。市営住宅の家賃が高くなる。
今までの住民サービスでないと困る人たちは今までの大阪が続いてもらわないと困るもん。
大阪市大阪府がああだからああなのにね。ああだからいい、ああだからこそいいんだ、っていう人がたくさんいるんだね。

いっそのこと。

かつて小泉首相が「自民党をぶっつぶす」ってぶちかまして人気になったように、いっそのこと「大阪市をぶっつぶして新しく作り直す」って言っちゃえばよかったのかしら。

大阪市役所をぶっつぶして、は言ってたね。

んー、どうかな。大阪の人は大阪好きだもんなあ。何でか分からないけど。
まあなー、隣の兵庫県民の畦道だって、神戸は好きだけど大阪好きじゃないもんなあ。震災の時も、大阪に住むくらいだったら東京に行こうかって思ったもんなあ。

それでも70万。

畦道は高校が退屈だったので生徒会長に立候補したのね。畦道の学年は11クラスあって、立候補したのは10人だった。そう、みんな退屈だったのよ。だから投票数も割れて、畦道に入れてくれたのは100ちょっとだった。
全部で1200人いるマンモス校で、そのうち100っていうのは多いのか少ないのか分からないけど、選挙が終わってから友達になった後輩が「実は先輩に入れた」って言ってくれてちょっと嬉しかったよ。
普通科の高校は大学の予備校でしかない、その意味では畦道の出身校はわりとちゃんとした予備校だったし、生徒会長になったからって学校が変えられるわけがない、そんなのはみんな分かってる。
でもね、選挙演説やらその他のなんやらの準備にはそれ相応の意味はあったと思う。価値はないけどね。意味はあったと思う。次の年は選挙管理して、みんなして会議室に集まって票を数えたよ。違う学年の子たちとなんやかんやするのは楽しかった。そういう経験には、それなりの意味はあったと思う。
住民投票と高校の選挙とは一緒にはならない。けど、少なくとも70万、もしかしたらもっとたくさんの人が大阪のことを真剣に考えたでしょ。
それには意味があるし、きっと価値もあると思う。
次の市長が誰になるか知らないし、選挙権もないけど、その意味をちゃんと理解できる、その価値が分かる人になって欲しいなと、選挙が盛り上がった試しのない兵庫県在住の畦道は思います。